IT導入の際の業務棚卸の粒度と業務フロー作成の方法
人材不足の解消や生産向上の必要性が高まるにつれ、中小企業においても業務のIT化が喫緊の課題になってきました。一方で、
- 実際にITツールを導入したものの思ったような成果が出ない
- 使いづらくて全然現場に浸透しなかった
- そもそもIT化するために何を考えてよいか分からない
と頭を抱える事業者さんも多いのではないでしょうか。
様々な要因はありますが、多くの場合ITを検討する前段階の「業務の視える化」に問題があります。今回はITを導入することを目的とした自社で行う業務の視える化についてご説明します。
さて皆さん、業務の視える化をする際に業務フローを作成すると思います。業務フローとは業務の一連の流れを図で可視化するもので、当然ITベンダーにIT導入を依頼すると、最初に現場のヒアリングを行いこの業務フローを作成します。
この業務フローに書く「業務棚卸の粒度」すなわち業務可視化の細かさ、実はこれが非常に重要なのです。ではどんな事を業務フローに落とし込めば良いのでしょうか。
結論から述べると、「SIPOC」と「名もない作業」です。
SIPOCとは
SIPOCとは、業務プロセス全体を構成する5つの要素、
- Supplier(仕事の供給者)
- Input(仕事のために必要な人・物・金・情報)
- Process(業務の順番・やること)
- Output(仕事による成果物)
- Customer(成果物の受け取り者)
の頭文字を取ったものです。
例えば稟議申請という業務をSIPOCでまとめると、このようになります。
- Supplier :稟議書作成者
- Input :予算計画、顧客情報、稟議フォーム、パソコン、Excel
- Process :稟議書作成→チェック→印刷→押印→FAX
- Output :稟議書
- Customer:所属長、経理、社長
稟議申請のワークフローを導入したにも関わらず、予算計画が紙で印刷されたものしかない場合、結局一番時間のかかる予算との照合作業は改善されておらず一切生産性が上がらなかった、むしろ使い慣れていないシステムによって生産性が落ちた、なんてことも起きてしまうかもしれません。
このようにSIPOCを使って業務を棚卸すると、生産性向上におけるボトルネックの発見や、どの領域までIT化すべきかが分かりやすくなります。
名もない作業とは
みなさんが日常業務をするとき、電話のやり取りで事前に根回ししたり、稟議書であれば進捗が気になって電話で社内に問い合わせしたりすることはありませんか?こういった名もない作業(主にアナログなコミュニケーション)も実は業務フローに書いておくことが大切です。
例えば進捗の問い合わせ電話が多い場合は、進捗ステータスが見えるようにできるシステムが良いでしょう。また根回しが必要であれば、申請とは別に根回しすべき相手に通知が行くような設定をしても良いのではないでしょうか。特に中小企業ではこういった名もなき作業、アナログなコミュニケーションが生産性向上のボトルネックになっているケースも多いのです。
このように、業務フローにはただ単に業務名を書くのではなく、「SIPOC」と「名もない作業」も合わせて書くことがIT導入の際には極めて重要です。これらを含めてITを導入し効率化できれば、生産性向上の効果も飛躍的に高まるはずです。
最後に業務フローのひな形を添付しますので、参考にしてみてください。